第73章 中野航平の妻は栄養失調

家が長谷川栞の辛いもの好きを知ってからというもの、シェフは毎食、必ず一品は酸っぱ辛い料理を添えるようになった。

夜。中野航平は早々に火鍋屋で待っていたが、栞は現れなかった。

店に確認すると、栞はそのまま長谷川家へ戻り、今夜は残業もしていないという。

会えなかったのは残念だったが、長谷川家なら栞の面倒はきちんと見てくれる。航平は追いかけるのをやめた。

長谷川家。

「うぇ――」

「おえ――」

「こんなに吐くなんて……辛いの、やっぱり無理なんじゃないの?」

トイレの中で、長谷川明子は栞の背中をさすりながら、焦ってその場で足踏みした。

栞は食べた分だけ、きっちり吐き戻してしまう。

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